転職活動が終わり、退職の目処がつき、申し出を考え始めると、
「いつ言えばいいの?時期、タイミングは?」
「事前に何を考えておけばいいんだろう。」
「上司との話し合いは正直なところ気が重い。」
「上司に引き留められたらどうしよう。」
「申し出後は、どんな風になるんだろう。」
様々な疑問や不安が湧き上がってきます。
- 同僚への迷惑は最小限で
- 理由の整理を通して、確固たる意志を持つ
- 申し訳ない気持ちいっぱいで臨む
- 申し出たら後戻りはできないと覚悟
- 上司の甘い言葉に踊るとレッテル
- 退職を申し出ようと悩んでいる方
- 退職の申し出時には何を考えておくべきか知りたい方
筆者はこれまでの20年で、退職は5回経験しています。また、好きな人や、仲の良かった同僚、尊敬する先輩や上司の退職を幾度どなく経験してきました。
- 最後に大騒ぎして辞めていく
- 引継ぎや挨拶も完璧にして辞めていく
- 辞めた後に仕事を大混乱させる
様々なケースを経験してきました。
一方で、筆者自身も退職の申し出前後に、思い出すだけでも恥ずかしくなるような失敗を繰り広げたり、逆に我ながらスマートに出来たなと思う事も少しはありました。
こうした経験から、やはり退職するのであれば、
- 立つ鳥跡を濁さず(他人にできるだけ迷惑をかけず)
が、1人の大人としてのマナーだと考えるようになりました。
ここでは、このキーワードになるべく近づくにはどうしたらいいのかを、スマートに退職していった有能な先輩や上司、そして筆者の恥ずかしい失敗だらけの退職経験をもとに書いています。
会社や上司や同僚に恨みがあり、復讐をしてから辞めたい方にはおすすめできませんが、この記事と反対の事をすれば、復讐は達成できるはずです。
ブログが長くなっているので、「申し出前」「申し出時」「待ち受けるトラップ(罠)」「申し出後」と、それぞれボタンで文を展開できるようになっているので、お手数ですが、必要な箇所をクリックしてご覧下さい。
申し出前
法律上は2週間前だけど
<民法 第627条>
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
この法律を盾にして
「こんな会社に気を使ってやる必要ない!」
と、突然辞めていく同僚も居ました。
確かに一理ありますが、やはり就業規則に従うべきと筆者は考えます。
就業規則の退職申し出時期は会社によって様々ですが、1~3ヶ月前と書かれている事が多いものです。
1ヶ月前に申し出た場合、実稼働は20日程度になります。この20日の中で、残務整理、引継ぎ、挨拶をこなすのはタイトなものです。
ましてや民法に従い2週間で電撃退職となったら、ほとんど何も出来ずに最終日を迎えるのは目に見えています。
2週間後、担当が居なくなった職場で混乱が起きるのは必須です。
自分や家族の病気・事故でも無いのに2週間で辞めるというのは、会社や上司に対する怒りの現れである事が大半です。これまでの仕打ちに対する仕返しとしてはスッキリするので、筆者も「絶対にやってやる!」と思った事は多々あります。
しかし、たとえどうでもいい他人であっても、他人に迷惑をかけるのは一人の人間として間違っています。退職は少なからず誰かが迷惑をこうむるので、1人の大人として迷惑を最小化するのは当たり前の事です。
仮に2週間で電撃退職をした場合、仕返しをしたい相手(上司)は大した被害は被らず、被害を被ってもらいたくない同僚や後輩に被害が及ぶものです。
こうした理由から2週間での電撃退職はおすすめできません。
では、どれくらいの期間がベストなのかは、自分が抱えている仕事量から引継ぎ期間は見えてくるものです。また、ある特定の月に自分しか知らない重要な仕事があるのであれば、その月も含め、逆算し、申し出時期を決める事がおすすめです。
(例:2月に予算の取りまとめをしていて、これは自分しか分からないのであれば、2月に居なくなる事は避ける)
繁忙時期は避ける
1年も居れば会社の繁忙期は分かるので、退職申し出や最終出社日はこの時期を避ける事をおすすめします。
退職する事で少なからず周囲に迷惑をかけるのだから、せめて繁忙期を避けるのが残される仲間たちへの思いやりになります。
「散々、嫌な思いをさせられた会社に最後の思いやりなんて必要無し。」
と筆者は思った事があり、繁忙期のタイミングでわざと退職した事があります。
退職した当初は、
「ざまぁみろ。深夜残業しまくって苦しめ!」
と笑っていましたが、月日が経つうちに
「人として恥ずかしい事をした。」
と思うようになりました。
しかし、退職時に愚かな行為をしてしまうと、戻って謝る事も出来ず、取り返しがつきません。
筆者のように「恥ずかしい思いと後悔」を持って生きる事はしてもらいたくないので、やはり繁忙期は避けるべきです。
伝えるのは終業後
上司と話をするのは終業後がおすすめのタイミングです。
退職の申し出はどうしても重苦しい雰囲気になります。
「了解。稟議しておくね。」
とあっさり終わる事は少ないはずです。
これを読んでいる方は、多くの仕事を抱えていたり、責任ある立場だからこそ退職申し出を悩んでいると容易に推察できます。
こうした方々だと申し出時には、
- 引き留め
- 説教
- 言い合い
- 長い沈黙
- 上司のあきらめの愚痴三昧
が必ず起きます。
朝からこんな話し合いをするのは、申し出る方も上司も精神衛生上よくありません。
終業後であれば、重苦しい状態で終わっても、すぐに帰ることができます。
翌朝、職場に入ると直属の上司、部長、役員あたりが会議室にこもっているはずです。
メールよりも対面で
「嫌いな上司と対面で話すのは気が重いし、メールで済まそう。」
こうした思いは誰しも抱きますが、対面で伝える事をおすすめします。
緊張で言葉が出なくても、最悪な空気でも、上司を目の前にし、退職意志を伝えましょう。
せっかく一大決心をし、退職後の進路も考えて行動し、退職を伝える段階までこぎ着けたのに、気が重いからメールで・・・、そこで逃げたらもったいない。
退職してからも人生は続きます。
「気が重い」「顔も見たくない」「緊張する」けど、誰かに何かを伝えないといけない場面は必ず訪れます。
そんな時に「一度逃げた経験」は活かされ、次も必ず逃げる事になります。
この先の人生のもっと大切な場面の為の練習だと思えば、乗り越えられるはずです。
申し出る前に準備する事
退職理由の整理と意志固め
「次が決まったので退職します。」
これは確かに退職理由です。
しかし、本当に整理すべきは、
「なぜ次を決める事になったのか?」
ここにフォーカスする必要があります。
次に向けて動き出したきっかけは、
- 仕事の中身なのか?
- 報酬なのか?
- 人間関係なのか?
- プライベートなのか?
さらには、どんな物語があったから次へ動き出したのかを明確にする必要があります。
「次が決まったんだから、それでいいんじゃない?」
と聞こえてきそうですが、申し出後は後戻りが出来ないので、このタイミングで退職理由の整理と意志を固め、迷いを無くす必要があります。
自分の決断は間違いないと確信が持てれば、申し出時の上司のその場しのぎの甘い言葉を聞いても揺らぐ事はありません。
退職理由を整理する上で気を付けたいのが、下記3点となります。
- 他人のせいにしない
- 前向きな理由にする
- 出来る限りうそはつかない
たとえ退職理由が他人(上司)のせいであっても、心の中に留めましょう。
筆者は退職申し出をきっかけとして、パワハラ上司を徹底糾弾した経験があります。
正直なところ良い思い出になっていません。それどころか後味の悪い思い出です。
いくら戦ったところで退職してしまうので、
「言いっぱなし」
「やりっぱなし」
で、後処理は誰かにお任せになってしまいます。
筆者の退職後、パワハラ上司は生き残り、仲の良かった同僚に告発された復讐を兼ねてパワハラを再開したのですが、もうどうする事もできませんした。
たとえ社長や取締役に直訴したところで、辞めていく社員の話なんて、話半分ほど聞いてもらえればいい方です。
退職もせず、会社に貢献し続けるパワハラ上司の方が「正義の退職者」よりも価値が高いのは当然なのです。
次に前向きな理由にするのは当たり前ですが、うそは出来る限りつかないに越したことはありません。
退職者の退職後の動向は噂になる事も多く、たまに
「退職理由で言ってた事と、全然違うじゃん!」
と話になる事があります。
同僚や上司の記憶の中で「結局最後はウソの人」になってしまうのは、勿体ないので出来る限りウソはつかずに去る事がよいと筆者は考えます。
先ずは家族に伝える
独身であれば親、既婚であればパートナーである夫や妻に事前に伝えましょう。
「自分の人生なんだから、自分で決める。」
「言ったところで、文句言われそうだし、既成事実を作っちゃえば何も言えない。」
退職申し出前後は気持ちも高ぶっている事が多いので、こんな気持ちになるのも分かります。
その一方で、社会は変化し続け、大企業に入れば安泰という時代も終わっています。
- 会社が倒産した
- 会社が債務超過に陥り、再生が始まり労働環境が過酷になった
- 会社でリストラが始まった
- 社会が激変し、当初の目論見が外れて収入の道が断たれた
こうした事が起きた時に頼れるのは家族しかいません。
もし事前に伝えず、ましてや「自分の人生だ!」と強気な態度を取っていたら、
「自分の人生なんでしょ。自分で何とか出来るんでしょ。」
と、冷たい態度を取られ、その場をしのぐために不本意な道を選ばざるを得なくなる可能性があります。
一方、きちんと話をしていれば、
「申し訳ない、しばらく支援して欲しい。」
と言うのも簡単です。そうすれば体勢を立て直して違う道にチャレンジする事もできます。
強気な態度を取れば取るほど、自分のセーフティーネットを失っていく事は「この世の法則」なので、事前に家族に伝える事を強くおすすめします。
退職日
- 弱気にならずに有休の完全消化
申し出前に最終出社日はいつにするか考える必要がありますが、悩ましいところです。
やはり、
- 引継ぎ期間+残りの有給休暇日数全て
で算出する事をおすすめします。
「完全な有休消化はちょっと・・・」
「上司がいい顔をしなさそうだし・・・」
ここだけは譲ってしまう必要は一切ありません。
前述したように退職申し出を悩まれる方は、多くの仕事をこなし、責任ある立場になった方々なので、完全消化する権利を有していると筆者は考えます。
有休を完全消化できない事で、この悪しき遠慮文化が継承されてしまう事になるので、後に続く同僚達の為にも完全消化する事をお願いします。
申し出時
申し出準備も終わり、高まる緊張を抑えながら上司の席に向かい、
「今日、お話ししたい事があるので〇時から30分ほどよろしいですか?」
「これから、ちょっとお話したい事があるのでお時間よろしいですか?」
上司と時間調整をした後はソワソワしてしまい、仕事も手につかない事でしょう。
そして時間になり、二人でミーティングルームに入ります。
「どうしたの?〇〇さん?何か仕事の相談?まさか辞めるとか?」
緊張は最高潮です。
ここではどんな風に伝えればよいのか考えてみます。
先ずはごめんなさい!
とにかく申し訳ない気持ちを前面に押し出し、謝りながら退職を伝える事をおすすめします。
この理由は、
- 退職は同僚に少なからず迷惑がかかるので、謝罪するのは当たり前との気持ちを持っている事を示す
謝罪の気持ちを入れずに辞める事だけを話していると、
「もう辞めるんだから知らない!関係ない!」
と、横柄な態度と取られます。
こうなると場の空気は一転します。
上司も文句を言ったり、愚痴を言ったり、それに対してあなたも応戦したりと、一気に険悪な雰囲気になります。
こんな状態になると、その後の引継ぎにも影響が及んでしまいます。
たしかに辞めるから知ったこっちゃないと言えばそれまでですが、冒頭の他人に迷惑をかけず、後を濁さずに退職するためには、平身低頭で謝りまくって切り抜けましょう。
個人都合で押し通す
人間関係が原因で辞める方にとっては、退職申し出は最後の機会なので、これまでのうっぷんをぶちまけたい気持ちになります。
さらに残される仲の良い同僚の為と、戦いたい気持ちも分かります。
しかし、それは思う通りにいきません。
なぜなら、
- 自分は所詮辞める人
- 事態をコントロールするのは他人
- 言葉に責任を持てない
からです。
退職後、残された同僚がさらなる被害者になっても、助ける事はもうできません。これは非常に無責任な事です。
自分が放った言葉に最後まで責任を持てないのであれば、最初から言うべきではないし、そもそも戦うのであれば在職中に戦うべき事なのです。
筆者も無責任なぶちまけで職場を混乱させ、退職後に同僚が迷惑を被ったと聞きました。しかし、弁明をしたいと思っても、退職した会社に乗り込むわけにもいかず、どうにもならない経験をしました。
こうした経験から、退職は個人都合で押し通し、周囲に波及させてはならない事を学びました。
あなたが責任ある立場なら?
- 責任を最後まで持つ姿勢を見せる
- 事前に自分の代わりになる人を作る
自分が仕事をリードする立場なら、この2つは絶対にやっておくべきです。
プロジェクト終了目処が見渡せない事もありますが、こうした場合は自分の代わりになる人を作っておけば問題ありません。
「育成する指示も受けていないのに勝手にするのは・・・」
と思うかもしれませんが、簡単な方法があります。
- 情報を得たらメンバーに必ず共有
- 打ち合わせは必ず誰かを同席させる
- 秘密の情報で、メンバーに知らせる事が出来ない時はメモで蓄積
これらを意識し、自分一人で情報を抱えない事をこまめに実行すれば、仕事やプロジェクトの途中で居なくなっても、メンバーがフォロー出来ます。
「知っているのは私だけ。分かっているのも私だけ。」
こうした事が増えれば増えるほど、辞める時の足かせになるので、特にリーダーは注意する必要があります。
最後まで屈しない
申し出の話し合いは緊張を強いられ、場の空気も悪くなり、早く終わって欲しいと思うものです。
時には上司から、
「もう一度よく考え直して、また話し合おう。」
と、保留されたり、強力な引き留めに遭遇し、
「そこまで仰るなら、取り下げます。」
と、折れてしまう事もあります。
そんな時は事前に整理した退職理由を思い出し、理路整然と退職理由を話し、上司に付け込む隙を与えないようにしましょう。それと、前述の「ひたすら謝る」が有効です。
上司が何を言っても、
「申し訳ありません。やっぱり、辞めます。」
を繰り返されれば、上司も返す言葉が次第に無くなります。
もし引き留めに屈してしまうと、その後は大きなマイナスを背負います。
結論から言うと、上司は本心から引き留める事はありません。
詳しくは後述の「待ち受けるトラップ(罠)」に記します。
待ち受けるトラップ(罠)
上司の甘い言葉にご用心
「じ、じつは・・・、〇月〇日をもって退職したいと考えています。」
しばらくの沈黙の後、上司からこんな事を言われます。
「〇〇さんには期待していたのになぁ。残念だよ。」
「残ってもらう事は出来ない?」
これらの言葉は上司が必ず言わなければならないセリフなので聞き流しましょう。
なぜなら上司は、上司の上司や役員へ報告したり、退職稟議に「引き止めたけど、ダメでした。」と記録を残す必要があるので、形だけの引き留めをしなければなりません。
さらには退職者数が増えれば、管理能力が無いと減点され、出世にも響くので、自分の保身のために言っているだけです。
決して退職申し出者を必要としているからではありません。会社とはそういうものです。
さらに、
「頑張っているから、近いうちに昇格・昇給も考えていたのに。」
「そのうち、この部署を引っ張っていく役職を考えていたのに。」
こんな甘い言葉をかけてくる上司がいます。
(筆者もこうしたウソを何度も使いました。)
筆者は退職申し出を5回経験しましたが、3回言われました。決意も固めていたし、申し出たら最後だと分かっていたので
「身に余るお言葉、有難うございます。申し訳ありません・・・」
と言い、やり過ごしてきました。
しかし、退職の意志がぐらついていると、
- 重苦しい雰囲気
- 上司の情けを誘うような話
- 期待されているような錯覚
- 「訂正するなら今のうちだよ」という上司の強迫的態度
こうした苦しい雰囲気に負け、まるで自分が悪い事をしている気持ちになったり、「こんなに必要とされているなんて」とジーンときて、思わず上司の甘い言葉に乗ってしまうものです。
上司は
「そうか、良かったよ。これからも頑張って下さいよ。期待しているんだから。」
「この件は、私のところでとどめておくよ。」
なんてことを言って、その場は終わりになるかもしれません。
ところで、なぜ上司の甘い言葉に負けて居残ってはいけないのでしょうか?
「こんなに期待してくれているんだから、残って頑張るのも一つの方法では?」
と思うかもしれませんが、退職を申し出たにも関わらず会社に残れば、「退職申し出者」という、その会社に居る限り消えないレッテルが貼られてしまうのです。
「退職申し出者」というレッテル
上司の甘い言葉に乗せられ会社に残り、上司は期待してくれていると勘違いして、今まで以上に頑張っていると、ある日、仲の良い同僚からヒソヒソ話で
「お前さぁ、退職したいって言ったの?」
なんてことを言われます。
「「私のところでとどめておくよ。」って〇〇課長?部長?取締役?は言っていたのに、なんで噂が社内中に広がっているの?」
とショックを受けます。
そんな噂が自分の耳に入ってこなくても、人事、部課長、役員(時には社長)にまで話が回っていると認識してください。
これは当然の事です。
上司からしてみれば退職申し出の処理は管理業務の一環であり、有能な上司であればあるほど「上司の上司」に”業務報告"をするのは当たり前の事です。ましてやみんなが飛びつきたくなる「退職ネタ」ですから、噂が広まらない訳がありません。
上司に、
「話が違うじゃないですか!なんで噂が広まっているんですか!」
と、食ってかかったところで上司からの心証を悪くするだけなので、黙っているしか道は無くなります。
「退職申し出者」の取り扱い
これまでの筆者の経験(事業会社での経営管理、社内システム構築、ベンダーSE)からすると、退職を申し出たという記録はシステム、エクセル、メール等のいずれかで残っています。
社内の人事管理システムやエクセルに「退職申し出」区分なるものがあったりする会社もありました。一度でも退職を申し出た社員はシステム用語で言えば「退職申し出フラグが立った!」といったところでしょうか。
更には、こういった記録より怖いのが「人の記憶」です。役員や部課長(おじさん達)の脳の神経細胞のつながりで「〇〇さん=退職申し出者」ができあがってしまうことです。これが思った以上に厄介なのです。
M&Aのプロジェクトメンバーの選定を役員達と話し合っていた時の事です。
「この人は優秀だからいかがですか?」
と筆者が聞くと、
「ダメダメ、以前退職を申し出た事があるんだよ。また負荷をかけたら辞めちゃうかもしれないし、もう大事な事は任せられないよ。」
と退職を申し出た社員をよく覚えているのです。
この役員は仕事の大切な事はコロっと忘れてしまうのに、こういった退職にまつわる社員の出来事は何故かしっかりと覚えているのです。この退職申し出は10年以上前の事でした。
筆者は気になったので、子会社の役員達に雑談で退職申し出者の話を振ってみましたが、やはりどの役員も申し出をして残った社員の事はよく覚えていました。
確かに前述の通り「退職ネタ」は給料に並ぶ最大の関心事なので、一度聞いてしまうと覚えてしまうのは仕方の無い事です。
こうなってしまうと、
- 噂を広めた上司を信用できずに疑心暗鬼
- 社内では「退職申し出クン、サン」としてレッテルが貼られてしまう
- システムと脳に記録される
- 大切なプロジェクトや業務にはアサインされなくなる
- 上司、役員からは事あるごとに「退職申し出クン、サン」として色眼鏡
と、何も良い事はなくなってしまいます。
仮にシステムは刷新されて「退職申し出フラグ」は消えたとしても、人の記憶を刷新する事は出来ないません。
結局その会社に居続ける限り、退職申し出の噂を知っている社員全員が辞めるまで「退職申し出者レッテル」を貼られ続ける事になります。
申し出たら退職以外に道は無し
「噂を広められて、疑心暗鬼で毎日を過ごすくらいなら、辞めておけば良かった。内定先だって断っちゃったから、転職活動もイチからやり直しだよ。」
と、ガッカリしながら転職活動を再開する事になりますが、いざ書類選考が通り、面接が決まり有休を取れば、
「面接の事、バレないかなぁ。」
と疑心暗鬼になり、さらに退職の噂を知っている同僚達は
「おっ!〇〇さん休み?ひょっとして面接だったりして?(笑)」
とからかわれます。
転職先が見つかり退職したとしても、同僚達からは
「〇〇さん、居づらくなって辞めちゃったね。」
上司や役員からは
「やっぱり〇〇はダメだったな。プロジェクトも任せなくて正解だったな。」
と、なんとも後味の悪い退職をする事になります。
こんな事態を防ぐためにも退職を申し出る際は「確固たる意志」を持つ必要があります。
気持ちをぐらつかせる上司の甘い言葉を振返って見ると、
「頑張っているから、近いうちに昇格・昇給も考えていたのに。」
「そのうち、この部署を引っ張っていく役職を考えていたのに。」
と、「近いうち」「そのうち」「将来」といった時期が曖昧な言葉が出てきます。
こうした言葉が出たら、口から出任せと考えて間違いありません。
こんな事を言われたら、
「近いうちっていつですか?」
「そのうちっていつですか?」
と質問してみてください。今までの優しい顔とは一転して、いつものイヤな顔をされます。
もうひとつ、特に20~30代前半の方に肝に銘じてもらいたいのが、
「常日頃から上司を信頼しない!特に課長、部長、役員!」
正直なところ、30代後半以上の赤の他人、ましてやサラリーマンという人種を信頼するなんてあまりにも世間知らずと言わざるを得ません。
筆者もそうだったように
「部下に見せる顔と上司・役員に見せる顔」
を巧みに使い分けているのです。この顔に騙されてしまう若い社員のあまりにも多い事。
やはり年を取るにつれて、話し方や、ウソもうまくなり、相手の心の動きを見ながら喋ることも出来るようになります。20~30代の若い社員を甘い言葉で夢見心地にして騙す事なんてお手のものです。
更に社内であれば、立場の違いもあるので威圧感、抱擁感を自在にあやつり、人生経験の少ない20~30代前半の若い社員の心をつかむのは容易な事です。
社員の心をつかむのも「管理業務」の一環で、部下の裏に回れば、全く違う顔をして、彼の上司(部長、役員)に、
「実は〇〇が退職申し出てきたんですよ。適当にあしらっておきましたが、そのうち辞めるかもしれないので、チェックしておいた方がよろしいかと。」
と従順な部下を演じるものです。
目の前の優しい、しわの刻まれた、全てを受け入れてくれそうな父親みたいな表情に騙されてはいけません。
申し出後
裏切り者扱いされる
日本企業、とりわけ昭和な価値観満載な古い体質の企業では、
「退職者=裏切り者」
となります。
筆者も「裏切り者」扱いをされ、申し出をした翌日から敵でも見るかのような視線を向けられ、イジメられた経験があります。
こんな状態になってしまった時の対処法について詳しく書いています。
感傷的な気持ちの対処
「みんなとお別れか。」と思った瞬間、誰しも寂しい気持ちが湧き上がってきます。
しかし、この寂しい気持ちを放っておくと次第に暴走し、同僚達からは、
「あ~ぁ、独りで舞い上がっちゃって。」
と思われているものです。
筆者も感傷的な気持ちが暴走し、
「残されるみんなの為!」
と恥ずかしい思い出をたくさん作ってしまいました。
こうした感傷的な気持ちの対処方法について詳しく書いています。
同僚や上司との退職後の付き合い
「嫌いな上司とは切れるのだろうか。」
「仲の良かった同僚とはどうなるのだろうか。」
退職時には誰しも思うものです。
「続く関係」「続かない関係」の基準があり、退職時にはこの基準を踏まえれば、
「この人とは今生の別れだな。」
「この人とは辞めても続くから「じゃあまたね」でいいな。」
と区別する事ができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
これで記事は終わりとなります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事は筆者自身の退職経験等を基にしています。
多少なりとも参考になれば嬉しい限りです。