退職を申し出た翌日くらいから、職場に違和感を感じ始めます。
「職場の同僚がよそよそしいのはなぜ?」
「上司が挨拶を返してくれないのはなぜ?」
「上司が攻撃してくるのはなぜ?」
「自分がやってきた仕事が突然方針転換されちゃうのはなぜ?」
それはあなたが「裏切り者」になったから、こうした事が起きるのです。
- 裏切り者へは厳しい仕打ち
- 原因は考えの古さとゴマすり中間管理職
- 会社も退職者も自分勝手
- 退職者はファンになる可能性
- 酷い仕打ちはネットの書き込みに反映
- 「退職=裏切り」は、百害あって一利なし
- 退職を申し出て「裏切り者」になった方
- 「退職=裏切り者」になるのが心配な方
筆者はこれまでの20年で、日本企業など、5社に所属しました。なので退職も5回経験しています。
勇気を出して上司に退職を申し出て、引き留めもなんとか切り抜け、
「さぁ、あとは残った仕事と引継ぎをしっかりやろう!」
とオフィスに入った瞬間、「よそよそしい雰囲気」襲ってきます。
「あ~ぁ、噂がまわっちゃったなぁ。」
と思いながら、自席で仕事を始めると天地がひっくり返ったような変化が起こります。
「退職=裏切り」の考えが定着している企業、特に昭和な価値観の古い体質の会社では、裏切り者に対する仕打ちが始まるのです。
目の当たりにする変化(仕打ち)
裏切り者には様々な「仕打ち」が待っています。
- 上司が居るオフィスで同僚に話しかけると、上司の目が気になるようで、同僚はソワソワして話を終えたがる
- 管理職達の視線が異様に冷ややか、時に敵意すら感じる
- 同僚が腫れ物扱い
- オフィスに入ると、みんなが話をやめて静まり返ってしまう
- デスクに居る自分に対して、管理職達が聞こえるように文句を言う
- 上司と決めた仕事の方針が突然非難され180度変更されてしまう
- 社長をはじめとした取締役、部長、課長達が出社時や退社時のあいさつを返してくれなくなる
- 打ち合わせに呼んでおいて「あっ、〇〇さんは辞めるから関係ないんだった。参加しなくていいよ。」とミーティングルームの入口で門前払いされる
「退職するって、そんなに悪い事なの?」
自責の念に駆られるくらい、こうした仕打ちを受ける事になります。
何故こんな事が起こるのか?
管理・統制が全て
こうした企業では、仕事よりも社員を管理・統制する事に重きを置いているので、
「退職は統制を乱す事」
とみなされてしまいます。
さらに
「退職=悪い事」
とすれば、退職に対する心理的障壁となり、退職を抑止出来ると考えています。
経営陣の考えの古さ
現在、経営層に居る60~70代の方達は高度経済成長期時代に培った
- 経営者=親、社員=子供
- 子が親を裏切るのは非常識
- 一度会社(家)を決めたら一生仕える
(石の上に一生) - 転職は中途半端の象徴
こうした考えを払拭出来ていません。
ゴマすりな中間管理職
一方で、時代遅れの考えを改めなければならない40~50代の部長・課長職層は、
「おっしゃるとおり!さすがは〇〇社長!〇〇取締役!」
「転職が当たり前なんて、こんなおかしな時代は長続きしませんよ!」
「〇〇社長に一生ついて行きます!」
と居酒屋でゴマをすりながらお酌するだけで、彼らの考えを改めようとする気持ちなど全然ありません。
これは仕方のない事です。
正直なところ、筆者が部長職をやっている時もしっかりゴマすりをしました。
筆者が担当していた情報システム部門は転職が当たり前の職種なので、
「古臭くてやってられません。」
「もっとキャリアアップ出来る会社を見つけたので辞めます。」
「エンジニアとして突き詰めたいので辞めます。」
と20~30代がサラっと退職しました。
こうした退職が起きる度に、上司(担当取締役、社長、会長)からは、
「ふざけるな!あんな奴は裏切り者だ!」
「何がキャリアアップだ!うちがダメみたいじゃないか!バカにしているのか!」
「お前がもっとしっかり締め付けてないから辞めて行くんだ!」
と怒られました。
そのたびに、
「おっしゃる通り!〇〇は裏切り者で最低ですね。」
「ここでキャリアアップ出来ないなら、他社に行ってもダメですよ。」
「もっと締め付けていきます!」
と、居酒屋でお酌をしながらゴマすりをしました。
筆者も心の中では
「転職くらいで裏切りって・・・、何時代?」
「いろいろな会社で経験積んだ方がいいのが当たり前。市場価値も上がるし。」
「くだらない管理をする暇があったら、自分のキャリアアップを考えよう。」
と考えていました。
あなたに「裏切り者!」と言う、世の中の全ての管理職達も思っているのです。
でも、彼らは上司(担当取締役、社長、会長)と戦いません。
上位職まで昇り、後はゴマすりだけしていれば昇給し、順番が来れば取締役にもなれるのに、あえて戦ってマイナスポイントを背負う必要は無いのです。
こうした会社では、上司に従順に従う事が全てですが、部長職以上ともなれば、絶対服従が必要なので、こうした賢い人達ほど状況を察して保身に走り、結果、何も変わらないのです。
こんな状況なので、少なくとも50代後半~60代が会社を去る、今後20~30年程度(現在2020年)は変化を期待しても無駄なのです。
自分勝手はお互いさま
会社(経営)から退職者を見れば、
「せっかく育てたのに、貢献もしないで辞めるなら、養成コストを返せ!」
と怒りたくもなります。
ただ、ひとたび不況に陥れば、
「人件費が利益を圧迫しているし・・・、リストラするか・・・。」
とバッサリ切り捨てる昨今。
これを社員から見れば
「会社だって自分勝手じゃん!」
「だったら、自分のキャリアアップが大切!」
と自分勝手にもなります。
そもそも高度経済成長期(1950~1970年代)の日本では「リストラ」はおおよそ存在せず、会社が社員を裏切らない代わりに、社員も会社を裏切らない風土が醸成されました。
バブル経済崩壊以降、会社はリストラで社員を裏切るようになったにも関わらず、社員が会社を裏切ると後ろ指をさされる不公平な風潮だけが残ってしまいました。
裏切り者とされた時の対処法
社員から見れば不公平な「裏切り者」とされてしまった場合、どのように対処していくのがいいのでしょうか。
反発の気持ちは抑える
裏切り者の扱いを受けると反発はしたくなります。
管理職が冷ややかな目で見れば、
「何かあなたに悪い事しましたか?」
とオフィス全体に聞こえるように言ったり、
仕事の方針が突然変えられたら、
「私が退職するからって見え透いた方針転換ですか?」
と上司にグサリと言ったり、
こうした事をやりたくなる気持ちは分かります。
でもここは耐えましょう。
平身低頭で切り抜ける
とにかく「申し訳ありません。」の表情を演技し、退職までの数ヶ月を乗り切る事をおすすめします。
管理職が冷ややかな目で見れば、
下を向いて、申し訳無さそうな顔をして会釈し、
仕事の方針が突然変えられたら、
「私の能力不足で変更させてしまい申し訳ありません。」
と言い、
さらには退職のあいさつやメールでも、
「退職をお許しいただき・・・」
「皆さんに多大なるご迷惑をお掛けし、申し訳ありません。」
と、心にも思っていない事を連発しましょう。
なぜ、平身低頭がいいのか?
- 反発すると不快な何かが心に残る
- 昔の上司達に会いにくくなる
- リファレンスチェックにドキっとしない
筆者は反発の限りを尽くして退職をした事が過去にありますが、今思い返しても「良い思い出」になっていません。
当時は徹底して反発し、方針変更をした上司に対して怒鳴り散らしたり、やりたい放題で退職しました。
当時は20代で若気の至りと言ってしまえばそれまでですが、今思い出すだけで赤面してしまう、見事な失敗でした。
こんな思い出を作ってしまうと、退職後に当時の上司が来る飲み会に誘われても、気後れしてしまい、断ってしまう事もありました。
さらに転職する場合、特に外資等ではリファレンスチェック(前職での仕事の確認)をされたりもするので、注意する必要があります。
退職してしまえば、その会社でやり直しは出来ないので、反発したい気持ちは抑えて、申し訳無い気持ちいっぱいの演技をする事をおすすめします。
いつかは理想的な姿に
ファンを会社外に放出
悲しいかな人間は、時が経てば、嫌な事は忘れ、良い思い出だけが残るものです。
普段は利益を出すために「多少のブラックな仕打ち」を社員にしても、辞めると決まった社員にはとことん優しくして送り出せば、彼らはその会社の「ファン」になってくれます。
ましてや退職間際の気持ちが大きく揺れ動いている時に受けた優しさは心に刻まれます。
筆者もある会社で最後の数日間に社長から、
- これまでの仕事に対しての感謝の言葉
- 未来への激励の言葉
を何回かもらい、トイレに行って泣いた思い出が10年近く経った今でも強く心に残っています。
今でも、その会社の製品があれば積極的に買おうとも思います。
最後に良い思い出に包まれた社員は、その会社のファンとなり、新たな取引や売上げをもたらしてくれる存在になります。
出入り自由
こうした会社はまだまだ少数派なので「出戻りOK!」の会社が増えてくれる事を期待します。
「別れて分かる元カノ・元カレの良さ」
ならぬ、
「退職して分かる元会社の良さ」
を感じる退職者なら、さらなる貢献をしてくれます。
「一度、退職した人間なんて信用ならない。」
「そんな心持ちではまた退職するかもしれない。」
「軽々しい気持ちで会社を決めるものではない。」
この感覚も、また時代遅れと言えます。
この時代にあっては会社は一生を賭ける重い存在では無くなっています。
こうした古い価値観を捨ててしまった方が多様な価値観を持つ人材が集まり、新たなアイデアも生まれ、会社の価値は確実に高まります。
「退職=裏切り」とする限り、未来の発展を閉ざす
会社が「退職=裏切り」の考えで「仕打ち」を行なっている限り、辞めていく社員は良い思い出を持つ事はありません。
「終わり良ければ全て良し。」
の反対、
「終わり悪ければ全て悪い。」
になっています。
こんな事をしていると、例えば、昔は心配する必要の無かったネットの書き込みも心配です。
「裏切り者の仕打ち」を受け、嫌な思いをした退職者がネットの会社評価やSNSに良い評判につながる口コミを書き込むでしょうか?
「ネットの書き込みなんて便所の落書きなんだから、誰も信じないだろ。」
こんな言葉を年配の経営者達からよく聞きましたが、ここでも時代から取り残されているのです。
新卒、中途に関わらず応募予定者はこうした評価を見るのは当たり前で、筆者も応募する際にはこうしたサイトを見て
「火のない所に煙は立たないから、この会社は危ないな。」
と応募をやめた事が何度かあります。
こうなってしまうと応募者も減り、人材も集まらなくなります。
やはり退職者を裏切り者扱いする事は、会社に何の利益をもたらさないばかりか、害を与えるのみ、つまり「百害あって一利なし」なので、退職者は優しく送り出してあげる事が会社にとっても退職者にとっても正解なのです。
これで記事は終わりとなります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事は筆者自身の退職経験等を基にしています。
多少なりとも参考になれば嬉しい限りです。