「海はいつできたの?」
「海の水はなんでしょっぱいの?」
「海はどれくらい深いの?」
「海の役割は?」
こんな疑問に答え、読後は海を感慨深く眺められる本に出会いました。
- 海の歴史、成り立ちが分かる
- どうしてしょっぱくなったのか分かる
- 海がいつか消える事に不安を抱く
- 質問されるたびにスマホで調べるカッコ悪さが減る
- 海について知りたい方
- 学生時代、一般教養に興味が無かった方
- パートナーや子供の質問に即座に答えたい方
冒頭の質問をされた時、スマホでググる方は多いと思います。筆者もそうでした。
ある時、子供が海に関する質問をしてきたので、いつも通りググっていました。
「なんで質問すると、いつもスマホで調べるの?何にも知らないの?」
と、痛いところを突いてきました。
「身近な海の事を何にも知らない・・・」
そんな時に出会ったのがこの一冊でした。
引用と要約
目次
第一部:原始の海
「地球カレンダー」で海の進化を見ていく
1. 1月1日 地球の創世記
2. 1月2日 月の誕生
3. 2月9日 海洋の誕生
第二部:海の事件史
1. 2月25日 生命の誕生
2. 5月3日 酸素の発生
3. 8月3日 超大陸の出現
4. 12月12日 海洋無酸素事件
5. 12月27日 最後の大変動
第三部:海水の進化
1. 海とは「鍋」である
2. 海に入るもの
3. 海から出るもの
4. 海底地形の機能
第四部:海のゆくえ
1. 海が消えるシナリオ
2. 海が消えた星
※ 目次より引用
地球カレンダーとは
この本では地球の歴史の時間スケールを表現する為に「地球カレンダー」という考え方を用いています。
46億年を「1年」に置き換えて、各年代を「日付」で表すものです。「地球カレンダー」によれば、地球のはじまりは「1月1日」、そして現在は「12月31日」の大みそかということになります。
※ 本書より引用
46億年を1年で置き換えると下表になります。
地球カレンダー換算 | |
---|---|
1年(365日) | 46億年 |
1ヶ月 | 約3億8000万年 |
1週間 | 約8800万年 |
1日 | 約1260万年 |
1時間 | 約3万年 |
1分 | 約8800年 |
1秒 | 約146年 |
上の表に当てはめて、現在(2020年)から1秒、10秒、1分前をさかのぼると、
地球カレンダー計算 | 時代 | |
---|---|---|
1秒前 | 2020年 - 146年 = 1874年 | 明治8年 |
10秒前 | 2020年 - 1460年 = 560年 | 古墳時代 |
1分前 | 2020年 - 8800年 =-6780年 | 縄文時代 |
この時間軸で地球に起きた事件、未来の地球に起こるかもしれない事を並べると、
地球カレンダー 出来事 約46億年前 1月1日 地球誕生 約44.5億年前 1月12日 火星くらいの星がぶつかった 約41億年前 2月9日 海が誕生 約38億年前? 2月25日 生命の誕生 約27億年前 5月31日 酸素の発生 約19億年前 8月3日 超大陸の出現(ヌーナ) 約20万年前 12月31日 23:37 ホモサピエンス誕生 約260年前 12月31日 23:59:58 イギリス産業革命始まる 約20年前(現在) 12月31日 23:59:59 21世紀が始まる 約10億年後 海水が地下(マントル)に吸い込まれ海の終焉を迎えるかも 約50億年後 水素を使い果たした太陽が赤色巨星になって地球を飲み込むかも ※ 本書より引用
学んだこと
この本では地球のなりたちや海の知識を深める事が出来ますが、一部を紹介します。
長石(ほとんどの岩石に含まれる)という鉱物は、風化や雨水などによる化学的な侵食などで分解すると、粘土鉱物に変化します。その際にナトリウムを放出し、それがイオンとなって川の水に溶け込みます。それが海に注がれます。海には火山活動によってたえず塩酸が供給されています。塩酸は塩素と水素の化合物です。海に運ばれたナトリウムはこの塩素と結びつき、塩化ナトリウムをつくるのです。す なわち「塩」です。
こうして海水は塩からくなっていき、さらには塩酸という生物にとっての猛毒が、海から除去されていったのです。つまり、河川によって陸から運ばれた物質が、海を変えたということができます。これも海と陸のひとつの「共進化」といえるでしょう。※ 本書より引用
→ なぜ海水はしょっぱいのかに対する答え。
(HCl + NaOH → NaCl + H2O)
この他にも学生時代に習ったものの、忘れてしまった知識を復習できます。
数値 | 備考 | |
---|---|---|
海水の塩分濃度 | 約3.5% | 醤油は約16%(醤油の1/5のしょっぱさ) |
海の液性 | ph8.2 | ほぼ中性(若干アルカリ性) |
陸上の最高点 | 8,848m | ヒマラヤ山脈のエベレスト山 |
海洋の最深部 | 10,920m | マリアナ海溝のチャレンジャー海淵 |
黒潮のスピード | 約7.4㎞/h |
地球が23.4度傾いているのは火星規模の星が地球にぶつかったから。
ヒマラヤのおかげでモンスーンが発生し、日本は砂漠にならなかった。
読後に起きる事、変わる事
海の見方が変わった
これは言うまでもありません。
目の前の海に約41億年の歴史があると思うだけで、ただただ圧倒されます。
さらに一酸化炭素と塩酸で満ちた原始の海から、多種多様な生物を育む海へ、偶然のような出来事によって生まれ変わった不思議さも感じます。
この本を読み終わると、読む前は「ただの海」だったのが、何か違う気持ちを持って海を眺められるようになります。
筆者の場合は「尊敬」の様な気持ちでした。
何かにつけて想像が膨らむ
月を見れば、
「ジャイアントインパクト直後、月はどれくらい大きく見えたんだろう?」
季節の変わり目には、
「ジャイアントインパクトが無かったら、どうなっていたんだろう?」
土砂降りの雨を見れば、
「海が形成される際の数年間の土砂降りは、こんな感じだったんだろうか?」
誰も居ない砂浜を見ると、
「人類が勝手に滅んだ後は、こんな感じで潮騒だけが鳴り響いているんだろうか?」
海水が口に入れば、
「火山と長石のハーモニー♪」
「どこの火山と、どこの長石がくっついたんだろう?」
と、楽しい想像が膨らみます。
海への愛が深まった
この本を手に取る方は海に関心があったり、海好きな方かと思います。
好きな人をあらゆる角度から眺め、過去も知る事によって本当の愛が芽生えます。
約41億年前に生まれ、紆余曲折の人生ならぬ「海生」を過ごした海の歴史を読めば、愛は一層深まる事は間違いありません。
地球と海に関する質問に答えられた
冒頭、子供に軽くバカにされていましたが、読後は海や地球に関する事や、小ネタまで答えられるようになり、
「お父さん、物知りだね。」
と言われ、ちょっとした優越感に浸れました。
自分の人生を謳歌しようと思った
地球:約46億年、海:約41億年、人間:頑張っても100年ちょっと・・・
人間は、海の4100万分の1の時間しか地球上に居られないんだから、何かをやりたいと思ったらすぐやらないと、あっという間に終わってしまいます。
圧倒的なスケールの地球や海と比べたら、毎日ウジウジしている筆者のあまりの小ささに笑えました。
最後に
第2部で著者はこんな事を言っています。
たとえ人類がこれまで危機感にあふれた活動を繰り返してきたとしても、長いスケールで見れば海にとっては一過性の現象に過ぎません。みずからが破壊した環境のために人類が滅びても、海はまたなにごともなかったように潮騒を鳴らしつづけることでしょう。
※ 本書より引用
と、短期的利益ばかり追求し、人間の存続に関わる大切な海を含む地球環境に影響を与え続ける人間の営みについて考えさせられます。
この本を読むと、海の歴史的背景、成り立ち、役割といった基礎知識を得られ、海に対する興味が増し、海の事をもっと知りたくなりました。
これで記事は終わりとなります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
多少なりとも本選びの参考になれば嬉しい限りです。